■スゴいことが起きる!?1000回への道、その65回目
その1はコチラ↓
〜プロフェッショナルになるには原点から理解すること〜
花畑:その『品質管理の高原さん』がどうやって講師に?
高原:品質管理の2年目かな、いきなり新入社員の研修を受け持つことになって。
花畑:え、2年目で!?
高原:業界のことをまったく何にも知らずに入社して、ホントにイチから教えてもらったその体験をそのまま教えてあげたら新人もわかりやすいだろうと…。僕の1つ上の先輩も専門学校の出身ではなくて、それで僕を推してくれたみたい。
花畑:そうなんですね。
高原:1時間半もしゃべらないといけないからね! そりゃあ教えるために勉強しましたよ(笑)。教えるためにはその10倍は知識がないと教えられない。
花畑:2年目に任せるってスゴいですね。
高原:僕がわかるように、僕が覚えたように、と思って。例えば、綿や麻は枯れ草、ウールは髪の毛、シルクは蜘蛛の巣、合成繊維はペットボトル、と素材の元をそんなふうに表現しましたね。
花畑:枯れ草! それはわかりやすい!!(笑)
高原:それから、3年目くらいには芦屋芸術学院のスタイリスト学科の商品知識の授業を受け持つことになって。
花畑:会社が外部講師とか企業と学校の連携とかに力を入れてた頃ですね。
高原:そうそう。結局7年間も教えることになって。その経験が今につながってるかなぁ。それで、ちょうど10年目くらいの時に、品質管理を極めるか、ちょっと興味のある企画の方面にいくか、決断の時が来て。
花畑:スペシャリストか? ゼネラリストか?ですね。
高原:でもやっぱりいろいろやってみたくて。エアトーク(=部署名)に行きたい、と自分から希望しました。
花畑:エアトークって、学校の制服や企業のユニフォームとかを作る部署でしたよね?
高原:そうなんだけど、制服やユニフォームだけじゃなくて、その企業さんが販売する商品を一緒に考えていくの。
花畑:エアトークってそんなこともしてたんですか?
高原:どっちかというと僕の仕事はそれがメイン。例えば化粧品の会社が、自社ブランドとして服も売りたい、という時に声がかかって。素材選びから商品構成、デザイン、生産管理、品質管理、ロットや納期の調整…。
花畑:1人アパレルじゃないですか!?(笑)
高原:そんな仕事を10年近くしたなぁ。
花畑:今の高原さんのベースはそこなんですね、やっとわかってきました! お話を聞くまで、意外と知らないもんだなぁ。
高原:その後、会社がセカンドキャリア、いわゆる早期退職を募って…。
花畑:僕、その時、会社をやめて独立したんです! 一緒でしたよね?
高原:うん、僕もその時、手を上げました(笑)。3つくらいの専門学校から講師として声もかけていただいてだし、なんとかなるんじゃないかと思って。
花畑:スゴイ、安泰ですね。
高原:いやいや、やっぱりドキドキものでしたよ。20年近く働いた会社を辞めるというのは…。ちょうどその時、ワールドから独立した先輩が作った会社があって、そこに後輩が行ってたのね。その後輩から、今の会社には品質管理がなくて洗濯表示が決められなくて困ってる。一度、来てほしい、と連絡をもらって…。その先輩に会ったら「じゃ、お前、月1回でいいから来いよ」と言ってくれて契約してもらって。その時『こんなことも、仕事になるのかぁ』と思ったの。
花畑:それが今のコンサルティングの仕事に繋がっていますか?
高原:そう、それでファッションコンサルタント事務所を立ち上げました。生産、販売管理、商品知識から店頭に立つ人の販売教育までできるなぁと。他のアパレル企業やOEMやODMの会社に声かけて…今では8社と年間契約してるよ。大学の専任准教授なんだけど、実務家教員ということでと実業もできて、2足のわらじ状態です。
花畑:高原さんの授業、受けてみたいなぁ。
高原:大学での授業は、デザインとか素材とか目に見えるモノに目が行きがちなところを、もっとベースの目に見えないところから興味をもってもらうように心がけてます。服が1枚できるのに、どのくらいの人の手が掛かってるかわかる?
花畑:企画、デザイン、生産…。
高原:そのもっと前。ウールを生み出す羊を育ててくれる人がいるよね。その羊が質の良い毛になるようにするには、餌も良いものを選ぶほうが良い。その餌を作ってくれる人がいるよね…
花畑:そんなところから!!
高原:うん。僕の計算では1枚の服にざっと2500人くらいの人が関わってるよ。
花畑:2500人!!
高原:他にも、例えば素材に関しては、カシミヤはカシミヤヤギから取れた毛のことをいうけど、カシミヤヤギは中国や外蒙古などのカシミール地方といわれる夏と冬の温暖差が激しい3000m級の山で棲息しています。だから、ごつごつした岩場からカラダを守るための刺し毛(硬くて長い毛)が生えている。そしてその下に寒さから体を守る綿毛(細くて柔らかい毛)が生えている。それこそ命がけの毛なんです。
花畑:刺し毛と綿毛! 教わりましたね〜。
高原:そうそう。カシミヤはその綿毛だけを、毛が生え変わる季節に櫛で梳き取り糸にする。ウールのようにバリカンで刈り取る素材じゃないんだよ。毛足が長くて超極細の繊維。そして少ししか採れない希少品で独特の風合いと光沢があり暖かい。繊維の王様と呼ばれる所以だよね。
花畑:そうなんですね!
高原:そんな原点のところからちゃんと理解できると、カシミヤが風合いが良くて暖かい理由も、価格が高い理由も納得できるしちゃんと頭に入るよね。
花畑:ホントそうですね。
高原:あと、素材の最初の授業では、僕はまず洗濯表示を説明するの。ドライクリーニング、手洗い、水洗い…水洗いも、単純に水で洗うという意味ではなくて、水に洗剤をよく溶かして、そこに洋服を浸すように2〜3分押し洗いする、という意味なのね。そんな洗濯表示の違いや意味を説明すると、授業を受けてる子たちが、自分が着てるものの洗濯表示を見出すわけ。
花畑:僕も今、見ました!(笑)
高原:そうそう(笑)、そうやって現実のものと結びつけてリアルに実感することがファッション業界のプロとしてのスタートになる、と僕は思うんだよね。
花畑:プロ意識を育てる、ということですね。
高原:うん、ただ服が好きなだけじゃなくて、プロフェッショナルになるわけだから。例えば、実際に営業や企画していて、生地屋さんの売り込みにあって、取引するかどうか迷う場面とかあるじゃない? そういうときは「なんで?」を5回聞きなさい、と教えてるの。
花畑:「なんで?」を5回?
高原;なんでこの素材なんですか? この素材のメリットはなんですか? デメリットは何ですか…みたいに。5回くらい掘り下げていってちゃんとした回答がもらえたら、その生地屋さんも売り込みの生地も検討してみる価値があるかも、と考える。そんな指標になるかなと思って。
花畑:確かに5回も掘り下げられると、商品知識がちょっとあやふやだったり、自信のない商品なんかだと答えに詰まってしまいますね。。。僕も使ってみよう!(笑)
〜キラッと光るファクトリーブランドに〜に続く
ニットで人を幸せにしたいーーー。
花畑和幸でした。
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有限会社アチェット 代表取締役
株式会社ワールドに15年勤務。営業、生産管理、商品企画を経験した後、2001年有限会社アチェットを設立。2017年秋、メンズブランド・hbkkを立ち上げる。