プロフェッショナルに聞く~仕事、遊び、人生~ 第2回 ゲスト:岡本仁志さん(前編)

■スゴいことが起きる!?1000回への道、その57回目

 

【岡本仁志 × 花畑和幸】

第2回ゲスト:岡本仁志(JAM 代表)テキスタイルデザイナー。
Profile:イラストレーターを目指し、高校、大学とグラフィックデザインを専攻。大学在学中、染色学科にて生地に絵を描くのを見てテキスタイルに興味を持ち、テキスタイルデザイナーとしてメーカーに就職。40数年間にアパレルで企画営業を経験し、中国を中心とする生産業務にも携わった時期もある。
平成16年に独立してJAMを設立。現在はテキスタイルを中心として生地を生かした、服だけにこだわらないファッション全般の物作りにも参画している。

 

●テキスタイルデザイナーの製品づくり

花畑 岡本さんとは僕が前職(株式会社ワールド)の時、生地メーカーに在籍していらして営業に来られた、その時からですよね。

岡本 そうですね。ワールドさんみたいな大手には相手にされないと思ってましたが、意外と聞いていただけて。

花畑 独立されてからは、生地だけでなく個性的な製品もお作りですよね。コンセプトとかはあるんでしょうか?

岡本 自分で企画する製品に関しては「クチュール・カジュアル」をコンセプトにしています。

花畑 カジュアルだけど仕立てられた1点もの?

岡本 僕は生地に関してはずっとやってきて自信もあるけれど、それが縫製されて製品になるイメージはなかなかできない。かといってすでに世に出ているもので良いなと思うものを真似してしょうがないし、作ろうとしても規模が違うからね、同じものなんて作れない。そもそも自分が狙うのはそこじゃないと思うから、世に出ている良いデザインやイメージはもちろん参考にさせてもらうけど、Made in JAM にこだわりたいなと。

花畑 なるほど。今回、hbkkの演出も含めて、オリジナルのストールをご用意いただいたんですけど、それぞれ個性的ですよね。

岡本 僕はフォーマル以外はすべてカジュアルだと思ってるから(笑)幅が広いよ。それこそ良い生地を感性やセンスで組み合わせて、たった一つのオリジナルのものを仕上げる。そこにはこだわってます。

花畑 岡本さんのテキスタイルはすべて日本製の糸なんですか?

岡本 今は日本製の糸なんてほとんどないよ。中国製やアメリカ製、あとはヨーロッパかな。

花畑 昔は日本製の糸もあった?

岡本 もちろんあったけど、日本の糸は種類も量もすごく限られてた。テキスタイルは糸がベースになるでしょ。でも糸を作る単位は1コール(=180kg)が100とか200になるわけ。当然大手でないとできないよね。日本の糸は元々少なかったから流通しなかった。

花畑 大量生産・大量消費の今の時代には適さなかった、と。

岡本 そう。でも流通しないものにも良いテキスタイルはたくさんある。それをカタチにしていくとおもしろいものが生まれるんじゃないかと。生地は「ゼロから作る」けど、縫製は生地を「組み立てる」って感じになるからおもしろいよ。

花畑 「組み立てる」って感じ、わかるなぁ。

岡本 でもおもしろいものができた=売れるわけじゃない!(笑)

花畑 そこが悲しいところですよね。僕らの若い頃は、とにかく「人と同じ格好をしたくない!」と思ってて、変わったデザインとか縫製とか、自分でアレンジも加えたりしてましたが、今の若い人はそうじゃない。

岡本 みんなと同じ格好で、小綺麗にして…髪の毛だけ金髪やピンクに染めたりしてるけど。

花畑 失敗したくない、悪目立ちしたくない、という意識からそうなるのかな。自由に使えるお金も限られてるし。

岡本 お金も、ファッションよりケータイに使う!

花畑 そうですね、ファッションがケータイに負けてる!(笑)。その流れで、ランキングとかができてきて。。。

岡本 「今シーズンニットNo.1!」とか(笑)。人気の高いものなら間違いじゃないから安心、と。

花畑 どっちが先かはわからないけど、それで大量生産・大量消費のファストファッションができてしまった。大量廃棄にまで繋がって、いまや社会問題・環境問題に発展してますもんね。でも僕はそれがどうしても違うと感じてしまって。スローフードじゃないけど、『スローファッション』の領域で勝負できないものかと。

岡本 今の若い人のほとんどがファストファッションで安いものを安く着てる感じがするけど、中にはこだわり派もいるよ。セーターやジャケットで5万円くらいする、いわゆる高級品を買ってるの。購入手段はネットなんだけど、その分、ちゃんと情報収集して、イイものを選んで。そういう人たちも一定数、存在してるのね。

花畑 高額商品をネットで買う!それが僕らにはだまちょっとできないけど…そういえば先日、表参道で有名な古着屋さんらしい店の前に行列ができてました。小さい店なので入店制限してたかららしいけど、雨も降ってるのにスゴい行列で。それでも並ぶんだ、と。しかも古着なのに。

岡本 古着は元々のモノが良くて個性的なものが多い。それを選ぶ若い人たちもいるってことだよね。若い子が古いバーバリーのシャツをアレンジして着てるとか、ちょっとカッコいいよね。

花畑 そういう若い人たちに対して、僕ら提供する側がちゃんと伝えられてない、届けられていないのが問題なんですね。

 

〜次回、「スーツを脱いだらカッコ良いんです!を提供したい!」に続く〜

ニットで人を幸せにしたいーーー。
花畑和幸でした。
hbkkオフィシャル&オンラインショップサイト
hbkk.jp

 

有限会社アチェット 代表取締役

株式会社ワールドに15年勤務。営業、生産管理、商品企画を経験した後、2001年有限会社アチェットを設立。2017年秋、メンズブランド・hbkkを立ち上げる。